関連本など
雑感・感想
「幕末史の奇跡」と呼ばれ、動乱の幕末期に彗星のごとく現れ去って行った、坂本龍馬33年の生涯を、幕末〜昭和初期の古写真約200点で振り返る写真集。龍馬自身はもちろん、勝海舟、中岡慎太郎、三吉慎蔵など著名な人物から、森山栄之助(多吉郎)、渡辺昇、柴田昌吉、赤松小三郎など、これまで幕末史の中であまり脚光を浴びてこなかった人物、龍馬が旅した風景の写真を中心に構成。龍馬が生きた時代が鮮やかに蘇る!永久保存版。
写真集というコンセプトは同じながら本書は宮地佐一郎『坂本龍馬写真集』・土居晴夫,一坂太郎,前田秀徳『写真集 坂本龍馬の生涯』・前田秀徳『写真集 龍馬脱藩物語』といった龍馬関係の写真集とはテーマが異なり、肖像も関係地も古写真(武市半平太・横井小楠・西郷隆盛は肖像画)にのみかぎり収載された書籍である。写真は項目数にして197、人物数は延べにして404、風景写真は22点をかぞえる(人物・風景の数は私集計。風景写真に写り込んでいる人物についてはここで人数にカウントしていない)。体裁は基本的に写真一枚が一項一ページ充てになっており、B5判の上部7割に写真が、下部3割りに写真・人物の説明が載る。
個人的な感想としては、収載人物のなかに龍馬との関わりがやや弱いと思える人物(大村右衛門・梅沢孫太郎・土方歳三・森山栄之助・柴田昌吉など)がいたり、説明文に気になる点もいくつか(坂本乙女写真説明、岩倉具視の立体写真としては破綻しているステレオ写真など)ないでもないが、龍馬写真をだいたい網羅的に集めていること、初見とする写真が相応にあったこと、巻末の写真リストが出典・所蔵先・判明する写真寸法など情報が簡明便利なことなど、良点の多い好資料に相違ない。座談会も縁者ならではの話題(伝来の坂本龍馬史料についてや三吉家の菩提寺について)など多数。
国書刊行会:二〇一四年九月八日:15,000円(税抜)
(平成ニ六年九月三〇日識)