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青木昇『幕府医師団と奥医師「青木春岱」』につき雑感


青木昇『幕府医師団と奥医師「青木春岱」』

概要

幕府医師団と奥医師「青木春岱」 幕末期の花又(花畑)〈現東京都足立区花畑〉出身の青木春岱(しゅんたい)。医師になり、しかも将軍の侍医である「奥御医師」の地位につく。森鴎外の「渋江抽斎」「その六十二」にこの春岱の名はある。医師としては当時最高の地位についた人物が郷里においてほとんど知られていない。また、当時技量抜群の流行医であったであろうことは疑いがない春岱が、何故今日かくもその事蹟が隠滅してしまったのであろうか。著者の執念の追跡が始まる。

雑感

書感 本書は巻末の初出一覧ほかによると、地方史誌『足立史談』に平成三年八月より不定期で連載された「青木春岱」にかんする一連の調査や論考をまとめた新書判書籍。
 幕府奥医師という当時の医師として考えられる最高峰の地位につきながら、ほとんど伝記といえるモノのつたわらない青木春岱という人物について、その調査開始の動機から「略伝」の完成までがつづられる。
 先行研究が皆無にちかい一人物の事跡をおう足掛け十二年(収録分)の研究過程が詳述されており、その苦労のあとや階梯がしのばれる。人物伝をまとめるという作業、その実見・記録として読むことができ、相似例の調査や研究を考えている初学の学生・研究者には、格好のテストケース(先例)として、参考ないし示唆に富む部分も多かろうと思う。
 なお、憶測などを極力排したその調査・研究姿勢には個人的にたいへん共感。不定期とはいえ連載モノという体裁だったためか、新書媒体にもてきした簡潔でわかりやすい内容。あつかっているテーマとあわせて堅実性がひかってます。

崙書房:平成十九年(二〇〇七)二月二八日 発行:1,000円(税抜)

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(平成一九年三月二一日識)

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