関連本など
雑感・感想
「もしも龍馬が近江屋で暗殺されていなかったら?」という趣旨でスタートする歴史ifマンガ。小説としては一応1つのジャンルとして認知されているわりにマンガでifものは比較的希少。予備知識が必要だと勘違いされかねないジャンルだけに、雑誌連載で嫌厭されるもまた宜べなるかな。
歴史ifものという作品の場合、その手法には出来るだけ歴史的蓋然性にちなんで物語を構築しようとする方法と、逆にひらきなおってドラマ性を重視する方法とがあろうかと思いますが、創作作品に関しては基本「はっちゃけた方が好き」な当方のこと、そういう視点でもって以下記述します。
まず当巻に登場する主要な歴史上の人物(いまのところオリジナルキャラクターは登場していない)は、坂本龍馬・上野彦馬・近藤勇・土方歳三・後藤象二郎・中岡慎太郎・西郷吉之助・陸奥陽之助・田中顕助・中村半次郎・大久保一蔵・岩倉具視などなど。顔見せや数コマだけ登場の歴史人物(沖田総司・木戸孝允・三吉慎蔵・徳川慶喜など)もふくめると、さらに数は結構なものになりそうです。ちなみに背景キャラじゃない女性キャラクターは今のところお龍さん(しかも数コマ)だけしか登場しておりません。いま登場人物を確認しながら「最近のマンガにしては珍しいなぁ」と思いました次第です。
本作は所々にナレーション的なかたちで史実系の情報(ただし一部に誤認有)をもりこんでは物語や人物に深みをもたせようと心配りしているようで、その点からは物語の展開をより蓋然的なものにしようとする配慮も読みとれます。ただ作品は龍馬暗殺に薩摩藩黒幕説を採用しており、ここでいう蓋然性とはあくまでもその展開制約上での蓋然性なので、受け手側とのあいだでどうがんばったって必然的にしょうじるであろう資料解釈や人物観とのギャップについては「そういう路線で設定されたお話しなんだ」とでも納得しておくが吉です。
マンガとしての画力や表現アングルなど、作者のマンガ技術とでもいうべきものは相当高いレベルにある作品だと思いますんで、興味のある方はコチラから第1話の試し読みなどしてみても如何がでしょう。ヒロイックタイプの歴史マンガに不良マンガ(所謂ヤンキーマンガ、)的のテイストを少々くわえたような、なかなか熱い仕上がりになっていると思います。
新潮社:2010年1月15日 発行:514円(税抜)
(平成二二年一月一六日識)