関連本など
雑感・感想
土佐史談会現会長の岩崎義郎氏の本。
坂本龍馬の土佐在国時(脱藩前および慶応三年-1867年-の一時帰国)を主題としてあつかう第一章では、伝記(『汗血千里の駒』・弘松宣枝『阪本龍馬』・『維新土佐勤王史』・千頭清臣『坂本龍馬』)の一節を場面々々でひきながら、現在有力とされる見解をあわせ紹介するといった構成内容。この点、菊地明氏の『坂本龍馬進化論』と似た印象をうけるが、こちらは『土佐史談』各号を中核資料として活用し、図や写真も多めに掲載されている。
龍馬が主題となっている都合上、巷間に知られた話題もおおく、必ずしも「秘録」のみというわけにはいかないが、『土佐史談』にのみ紹介されている低露出度の情報がおおいため、本書を読んで初見とする読者諸氏も相応おおいのではないだろうか。
また書名にも名を見せる龍馬の妻「お龍」については、龍馬死後の土佐在国時の話題を中心に簡潔にまとめられており、『土佐史談』や地元紙にみえる情報がこちらでも活用されている。
第一章が龍馬を中心とする構成な一方で、他章は土佐の戦国・江戸・幕末期に焦点をあて、読みものとして楽しめる話題が多い。なかでも幕末期の話題は、二章(廣井磐之助の仇討/吉井四郎の仇討/切腹二題)・五章(西郷隆盛の土佐来国)・六章(高知新田藩と悲劇の殿様/十三代豊熈の西部巡検/錦の御旗土佐へ)にわたり載っており、全体的な構成からは「平尾道雄選集」(第二巻「土佐・庶民史話」、第三巻「土佐・人と風土」、第四巻「土佐・武道と仇討ち」)に似た印象をうけないこともない。
龍馬知識の初〜中級者はもちろんのこと、相応詳しいと自任する人にも「ひょんな発見があるだろう」とオススメしてみたい一冊。
岩崎義郎:リーブル出版:2010年8月20日 発行:1,428円(税抜)
(平成二三年二月一一日識)