space_space.gif
 龍馬堂>>関連本など>>雑感・感想>>南寿吉『龍馬を見抜いた男 樋口真吉伝 届かなかった手紙』につき雑感
space_space.gif
坂本龍馬の目録

関連本など

LinkMark雑感・感想

LinkMark電子書籍 New

LinkMark2020年~2023年 New

LinkMark2015年~2019年

LinkMark2010年~2014年

LinkMark2005年~2009年

LinkMark2000年~2004年

LinkMark1995年~1999年

LinkMark1990年~1994年

LinkMark1980年~1984年

LinkMark1980年~1984年

LinkMark1965年~1979年

LinkMark1964年以前

坂本龍馬

LinkMark龍馬概略

LinkMark龍馬日譜

LinkMark龍馬詩評

LinkMark考龍馬伝

LinkMarkえにし

LinkMark関連本など

space_space.gif

南寿吉『龍馬を見抜いた男 樋口真吉伝 届かなかった手紙』につき雑感


南寿吉『龍馬を見抜いた男 樋口真吉伝 届かなかった手紙』

概要

『龍馬を見抜いた男 樋口真吉伝 届かなかった手紙』 暗殺される直前の龍馬の手紙
今の居場所が危険なのは分かっている。樋口真吉に相談して安全な隠れ家を探してくれ。
 龍馬暗殺から一世紀半。動乱の幕末を幡多より土佐、博多、長崎、江戸と駆け巡った樋口真吉。今、新史料で幕末史に新しい光を当てる。
第一章 真吉の生きた時代
第二章 幡多の志士・樋口真吉
第三章 西洋砲術の導入
第四章 龍馬と真吉の出逢い
第五章 激動の時代
第六章 龍馬赦免 伊豆下田に吹いた神風
第七章 勤王党弾圧・雌伏の時代
第八章 届かなかった手紙
[帯から引用]

雑感

書感 長いあいだ樋口真吉について研究をしておられる南寿吉氏の著書。本書は名がそのままを表しているとおり、幕末期に活躍した幡多郡の志士樋口真吉に関する伝記本です。全体は人物に台詞のついた小説・物語調の文を基本にしつつ、ときにより著者の考察ないし説明が入る構成になっています。

 章段ごとにとりあげる話題は概してみると編年にならんでいるものの、場面によっては年代が相前後するため、ながれにブツ切れ感が折によってはみれらます。この点が物語効果を仮にねらったものであるとすると、話題が飛び飛びなせいか、むしろ効果的とは言いえない印象を正直うけました。

 本書は県立青山文庫後援会から翻刻も出ている『樋口眞吉傳』を基礎史料にしているとおぼしく、真吉の国事日記として相応に著名な『遣倦録(愚菴筆記)』のほか、いまだ翻刻されていない周辺史料(書中には『遺墨』・『辺警雑記』といった史料名がみえます)も場面によって参考にされています。

 

 そのうち平成二二年(2010年)に坂本龍馬と中岡慎太郎の暗殺について、やや目新しい記述があることで新聞でも報道された新史料『日新録』については、該当のページが写真にて掲載こそされているものの、該史料の性格その他について言及はなく、"史料"としての利用価値は本書にあまりのぞめません(のこりの未翻刻史料でも原文引用がない点はおなじ)。

 ただし、真吉につけられたアダ名だとか、その肖像写真にたいする考察だとか、文久三年(1863年)山内容堂の海路上洛に反対した真吉の真意だとか、新知見や妙味ある解釈はおおく、”資料"としての参考価値は決して捨てたものではないはずです。

 小説・物語形式の記述は、歴史の初心者でも畏まったり・シャチコばったりせず、とっつきやすい点が長所だといいえますが、一方どこまでが著者の創作・演出のつもりで、どこまでが歴史解釈・見解のつもりなのか、判別が率直つきにくいです。本書の主題を歴とした史伝として読みたかった人間からすると、どうしても冗長に感じられるのが残念でなりません。

 また全体の文章比率も真吉に直接関わりのない歴史事象について説明がおおく、これが初心者の理解におおきな助けとなる点は疑いないのですが、その文章量と主題部分(真吉の伝記部分)を比較すると、ややバランスに不均衡なものを感じなくもありません。総じていうと、初心者にこそオススメしたい著書に仕上がっています。

有限会社テラ・リーブル出版:二〇一一年三月一五日:1,524円(税抜)

mark_utarntop.png PageTop 


(平成ニ三年六月二五日識)

mark_utarntop.png PageTop 

space_space.gif
space_space.gif
 龍馬堂>>関連本など>>雑感・感想>>南寿吉『龍馬を見抜いた男 樋口真吉伝 届かなかった手紙』につき雑感 
space_space.gif