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宮川禎一『全書簡現代語訳 坂本龍馬からの手紙 』につき雑感


宮川禎一『全書簡現代語訳 坂本龍馬からの手紙』

概要

『全書簡現代語訳 坂本龍馬からの手紙 』 『はからずも』
龍馬の手紙でもっとも多く用いられた表現である。龍馬は手紙で何を伝えようとしたのか。手紙に托された龍馬の真実を探る。
 百四十通ほど残る坂本龍馬の手紙全体を見わたしてみると、彼がもっとも多く用いたのはおそらく「はからずも」という表現ではないでしょうか。現代語としては「突然に」や「思いもかけず」とは訳してみましたが、あまりにも多く現れていましたので、後半では「はからずも」のままに使いました。はからずも寺田屋で襲われ、はからずもイロハ丸は沈み等々。すなわち龍馬の心根では常に予期せぬ事態に巻き込まれてとの想いが強かったものと推察します。……(「あとがき」を現代語に)
[帯から引用]
 はじめに
第一章 龍馬の青春 嘉永六年~文久元年
第二章 土佐脱藩と海軍 文久三年~元治元年
第三章 薩長同盟への道 慶応元年~慶応二年三月
第四章 長幕海戦と亀山社中 慶応二年六月〜十二月
第五章 海援隊 慶応二年十二月〜慶応三年四月
第六章 イロハ丸沈没 慶応三年四月〜七月
第七章 イカルス号事件 慶応三年八月〜九月
第八章 大政奉還 慶応三年十月〜十一月
第九章 年月等不詳の手紙
補章 龍馬に関わった人々の手紙
主要登場人物一覧
坂本龍馬の略年表
文献一覧
あとがき-一筆啓上-
[目次から章立てのみ引用]

雑感

書感 本書は名にしめされる通り、坂本龍馬書簡の全現代語訳です。原文は基本掲載されていないので、まず座右に(当然なければないで何の問題はないんですが)『坂本龍馬の手紙 講談社学術文庫』など用意しておけば、龍馬を多角的に理解する一助にはなろうかと思います。

 訳文は龍馬書簡一四〇通および「新政府綱領八策」一項をおさめ、補章として寺田屋遭難・長幕戦争・龍馬の死にかかわる文章など六項をおさめます。各項は推定年月日と宛先を基本的な見出しとし、宮川禎一氏判断による文章の重要度がで印され、そのとなりには現在判明している蔵所先も明示されています。訳文には()のかたちで、文章理解を助ける補足的な文が挿入されており、手紙にありがちな当事者間でないと理解に苦しむという文章も、予備知識なしでシッカリ読めるよう手が加えれています。訳文の後段には書簡の歴史的立ち位置を教えてくれる解説、下段には人物や用語についての脚注もあるので、「龍馬? 名前なら知ってるけど……」という程度の初心者にも読める内容になっているのではないでしょうか。斯く予備知識がなくとも障害すくなく理解できるよう配慮・構成がなされている一方、宮川氏が旧著(『龍馬を読む愉しさ』など)にてあきらかにした研究の成果や近年新聞などに取り上げれた発見など、情報性自体も新しいので、読み手によってはその点も本書を手にとる理由の一つにはなろうかと思います。

 基本となる構成や特色は以上ですが、上述のほかに私個人が注意をひかれました点には雑破ながら
 ●安政三年九月二九日付書簡の宛名が、これまでの「相良屋源之助」から「相良屋源三郎」に改める必要があること。
 ●慶応二年夏ごろ乙女にあてたと推測されている手紙について、これを一年早い慶応元年夏ごろのものと推定し、文中の将軍家を地下ニ致候事という表現を将軍を諸候の列に落とすと解釈していること。
 ●龍馬の書簡に何度かみえる「義理」という表現について、「あるべき正しい道理」のような意味と明確に説明していること。
 ●慶応二年一二月四日付坂本家宛書簡にみえるピストル弾倉の表記がちゃんと六連装のものとして描かれていること(私は寸心さんのブログ記事「龍馬が使用したピストル」にてこのことを知ったばかりだったので妙にタイムリー)。
 ●慶応二年一二月四日付乙女宛書簡にて描かれる霧島の図について、元になる絵が別にあるのではないかと指摘していること。
 ●慶応三年六月二四日付乙女・おやべ宛書簡にみえる国家の御為命すてるにくろふハせぬ位なものニて国家のために命をすてるほどの苦労を嫌がるような人柄でと訳していること(この訳にはちょっと違和感がないこともないので)。
 ●慶応三年一〇月九日付坂本権平宛書簡について、実物書簡から確認できる墨移りの跡から、執筆時のあわただしい様子まで指摘・説明していること。
 ●補章にて紹介されている寺田屋事件にまつわる中井弘の書簡が、私はなにげに初見なこと。
などがあります。

 翻訳とはつまるところ一種の注釈作業なので、他者の解釈に興味などお有りの方は御一読をオススメいたします。

教育評論社:2012年6月9日:1,800円(税抜)

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(平成ニ四年六月二三日識)

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