関連本など
雑感・感想
帯にはNHK大河ドラマ『八重の桜』『龍馬伝』『篤姫』『新選組!』
の文字があり、内容説明にも坂本龍馬らの文字があったので、大河ドラマにおける考証の手続き、シナリオにおけるフィクションとノンフィクションのせめぎあいなどについて書かれていれば面白いなと思い購読。
ところが、いざ読みすすめてみると記述の仕方こそ幾分か違え、内容的に重複する箇所が多く、ドラマの長々とした場面引用や対談の記事の収録など、冗長さがどうしても目についてしまう構成になっています。それもある意味当然で、はじめに目次を読んで確認しておけば良かったのですが、巻末に「初出一覧」とあるように本書は書き下ろしではなく、テーマ的に共通する諸処の記事をまとめ単行本としたもの。吉川弘文館の同価格帯の書籍として考えると内容の淡白さが際立ち、コストパフォーマンスが良いとはどうしても言えない内容でした。
本書は雑誌などに執筆された個々の記事をまとめたという体裁上どうしても記述に重複する点が多く、取り扱っているテーマも目次から察せられるようにかなり雑多なもので、書名とはやや距離を感じずいられないものがいくつかあります。「時代考証学」という学問分野の立ち上げ、ドラマに対する視聴者欲求の変化、ドラマ場面を引用しながからおこなう作劇意図の説明、劇中使われる歴史用語の検討、江戸時代に対するイメージの変化、生活・食文化史のドラマへの反映、地方史研究によってもたらされるドラマの描写や人物像の掘り下げ、篤姫・新選組・坂本龍馬などの活躍した幕末維新期の概略的な時代説明などなど、その範囲が広いぶん内容の濃さにおのずと限界のある記述ばかりが目につくので、取り上げられている個々テーマに本書を読む以前から興味のある人であれば、既知の内容を敢えて繰り返されているだけに終わる可能性が些かなきにしもあらず。
篤姫・新選組・坂本龍馬など対象人物に特段の予備知識がないまま大河ドラマを視聴し、その時代や作劇上の考証に興味をもった人向けの本、とでも言えばいいでしょうか。書名の「時代劇の見方・楽しみ方」を期待すると、やや肩すかしをくらいかねません。
吉川弘文館:二〇一三年(平成二十五)八月一日:2,800円(税抜)
(平成ニ五年八月二四日識)