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宮川禎一『「霧島山登山図」は龍馬の絵か? 幕末維新史雑記帳』につき雑感


宮川禎一『「霧島山登山図」は龍馬の絵か? 幕末維新史雑記帳』

概要

『「霧島山登山図」は龍馬の絵か? 幕末維新史雑記帳』 龍馬の手紙の研究でしられる著者が龍馬そして幕末維新史について語る!龍馬は、妻おりょうと行った霧島山登山のことを姉乙女に手紙で詳しく伝えている。その手紙に描かれた絵は「霧島山登山図」として知られている。龍馬の絵心を表すともいわれることがある絵だが、龍馬のオリジナルの絵といえるのか。このほか坂本龍馬やその周辺を中心に、幕末維新史にかかわる話を多数収載!
[以上、内容紹介から引用]
はじめに
第I部 「霧島山登山図」は龍馬の絵か?
 桶町千葉道場の月謝/「霧島山登山図」は龍馬の絵か?/ある姫君の生涯/千葉重太郎のその後/龍馬という名前/ギザギザの日本刀/議会制度の草創/新選組余談/槇村正直の明治維新/手紙の速度/寺田屋と隼人石/龍馬評価の東西性/筆跡鑑定の真偽/井口新助氏の想い出/薩長同盟の六箇条/龍馬は無名だったのか?/龍馬の手紙を読む/新発見「越行の記」の重要性/食生活の文明開化/武士の起源/孝明天皇陵に見る王政復古/青木周蔵の開眼/再発見!龍馬の脇差/北斗七星の指す方角/歴史の最終評価者
第II部 墨消しの真実
 矛盾する史料のはざま/洋書の謎/寺田屋遭難の一件/「浪速のことも夢のまた夢」/「マディソン群の橋」の教訓/想い出が歴史に変わる時/『龍馬伝』への悪口/高松千鶴の便箋/左手に巻紙、右手に筆/京都出土の土佐瓦/伏見の三十石舟/写真の威力/末っ子ふたり/何の浮世は三文五厘/我輩は猫である/雨乞いの名歌/山内一豊の名馬/「御用捨無之方」/墨消しの真実/歴史の本質/海援隊商事印/維新は遠くなりにけり/国家は文学でできている/不愉快な歴史/師弟の契り/『007は二度死ぬ』/父親のよろこび
第III部 考古学異聞
 ストーンヘンジと夫婦岩
(付)明治〜昭和初期における龍馬および本書に関わる人物事象の年表
あとがき
[以上、目次から引用]

雑感

書感 京都国立博物館上席研究員宮川禎一氏の本。第I部が京都龍馬会会報『近時新聞』連載記事(平成二十一年九月一日から平成二十八年九月一日まで)をまとめたものであり、第II部が高知県立坂本龍馬記念館季刊誌『飛騰』内「現代龍馬会」連載記事(平成二十二年四月一日から平成二十八年十月一日まで)をまとめたもの。第III部は本書のための書き下ろしで、イギリスの世界遺産「ストーンヘンジ」が現在"太陽崇拝祭祀施設"と目されることに関わる日英史のお話。
 本書の第I部は一項目がだいたい6ページ前後、第II部が見開き2ページにおさまる随筆・随想で構成されており、肩をはることもなくサクサク読みすすんでいけたのが印象的。当然、龍馬に関する話題が本書の中心をなしているものの「幕末維新史雑記帳」という副題がしめす通り、龍馬の周辺・関係者にまつわる話題や幕末維新という括りだけで龍馬とは直接関係のない記事も多い。
 例えば第I部の場合、丹波山国隊史料にみえる千葉道場の月謝など費用(桶町千葉道場の月謝)、千葉佐那が指導をした宇和島藩の姫君「正姫」(ある姫君の生涯)、維新後の千葉重太郎と京都体育演武場について(千葉重太郎のその後)、パークス護衛時に使用した中井弘の刀(ギザギザの日本刀)、『新選組物語』にみえる虎の素性(新選組余談)、槇村正直がとった諸"開化"施策(槇村正直の明治維新)、宇和島藩を例にみる幕末期の音信の速度(手紙の速度)、再建寺田屋と杜本神社の古代風石碑(寺田屋と隼人石)、藤原道長経筒の筆跡(筆跡鑑定の真偽)、近江屋後裔井口新助氏(井口新助氏の想い出)、福沢諭吉の牛乳推奨(食生活の文明開化)、『今昔物語集』にみえる武士(武士の起源)、孝明天皇御陵造営にみえる復古調(孝明天皇陵に見る王政復古)、青木周蔵と福沢諭吉(青木周蔵の開眼)、などはそれに当たるだろう。
 龍馬に関する話題としては新発見「越行の記」の重要性再発見!龍馬の脇差が、それぞれ平成二十六年(2014年)の新発見書簡(NHKのバラエティ番組「突撃!アッとホーム」にて偶然発見されたもの)と平成二十七年の再発見脇差(備前長船勝光同宗光合作)をあつかっており、書簡の全文翻刻、脇差発見の経緯など本書の中では取り分け資料性が高い。
 そのほかにも個人的には龍馬評価の東西性(人物評価の地域性についての話し)・龍馬は無名だったのか?ヨミダス歴史館を利用した知名度調査)・矛盾する史料のはざま(龍馬書簡にみえる千葉佐那と宮川氏が個人的に資料からもった印象の差異についての解釈)・高松千鶴の便箋(安政三年秋ごろ推定される龍馬宛高松千鶴書簡の用紙についての話し)などは龍馬好きとして純粋に読んでいて面白く、同好の方には一読を薦めたくなる。

管理人のTwitterでの感想

教育評論社:二〇一六年十一月一日:1,600円(税抜)

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(平成ニ八年一一月一五日識/同日追記)

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