関連本など
雑感・感想
いつもなら感想に近いものをここには書くんですが、その辺はTweetに譲って今回は各章内容を概説・箇条書きします。概要に引いた目次部分とあわせ読んで頂けると理解しやすいかも知れません。
1章、高島秋帆とペリー艦隊の艦載砲について、また本書の全体概要をしめす。
2章、我が国への鉄砲伝来から説いて火縄銃と大砲の違い、史上知られた大砲の紹介。
3章、ペリー来航以前以後の世界状勢、露艦ディアナ号および薩英戦争における英国艦隊の艦載砲について概説。
4章、溶解炉の変遷というテーマにもとづきタタラ製鉄とコシキ炉の説明、幕末に反射炉が多数建設された意図、反射炉の例として滝野川反射炉・佐賀藩の反射炉について言及、最後に幕末期のものとして現存する青銅砲と鋳鉄砲の紹介。
5章、幕末期反射炉の歴史的位置づけ、先行研究に鋳造技術を専門とする著者の見解をあわせて述べる。
6章、鋳鉄製大砲製造に向けた我が国の製鉄事情、明治時代に立てられた鉄鋼の分類名称や製法名称、高炉の導入から明治半ばまでの話し。
7章、幕末に製鉄所・造船所が必要とされた背景、幕末から明治の主な製鉄所・造船所・軍工廠の紹介、とくに大砲製造との関わりで大阪砲兵工廠を詳述。
8章、明治期の製鉄事情を釜石・中小坂・八幡を中心に述べる。
9章、鋳物のおおまかな歴史、また鋳物に端を発する石川島造船所(現在のIHIなどに至る)・長崎熔鉄所(現在の三菱重工などに至る)の歴史。
10章、鋳物工場を起点として明治以降に設立した大企業の紹介。
11章、戦時の金属供出によって失われた金属製品や歴史的建造物への感慨および巻末にあたってのまとめなどを記す。
以上。
『大砲からみた幕末・明治 近代化と鋳造技術』読了。書名からは幕末・明治に使用された大砲を紹介するミリタリー寄り本にも思えなくないですが(幕末の著名砲ってアームストロング砲くらいしかないですけど)、本書は副題のとおり大砲の"鋳造技術"を主題にした書籍です。 #大砲からみた幕末・明治 pic.twitter.com/Fx7i8l7mgi
— 松裕堂 (@syoyudo) 2017年3月9日
書名は副題「近代化と鋳造技術」と主題「大砲からみた幕末・明治」の位置を入れ替えた方が正直内容に沿ってる感が強く直接大砲への言及より溶解炉(甑-こしき-・反射炉・高炉など)や材料鉄(銑鉄・鋼など)、諸施設(製鉄所・造船所・軍工廠・企業)の方が豊富です。 #大砲からみた幕末・明治
— 松裕堂 (@syoyudo) 2017年3月9日
ちなみに鋳造技術の話しとなると、いきおい化学知識も求められるんじゃないかと危惧される向きもあろうかとは思いますが、基本的に鋳鉄・鋼の違い(炭素・ケイ素の関係)程度の知識があれば読むには問題ないので、その辺あまり気にしなくて大丈夫だと思います。 #大砲からみた幕末・明治
— 松裕堂 (@syoyudo) 2017年3月9日
ほかの特徴としては図表が豊富で(白黒なので奇麗・精細だったりはしませんが)諸施設の写真や絵、各種溶解炉の図、現存する幕末期の大砲写真など、総計で図が約95点、表が約20点くらいあります。特に各溶解炉の写真や図は視覚的にもわかりやすくありがたいところ。 #大砲からみた幕末・明治
— 松裕堂 (@syoyudo) 2017年3月9日
こういう(添付画像)文章を読むと「ほんとベンチャーなことしてたんだよなあ」と改めて感心したりする今日このごろです(誰の事とはいいませんが誰の事とは)。 #大砲からみた幕末・明治 pic.twitter.com/6yL1qPuW7q
— 松裕堂 (@syoyudo) 2017年3月9日
法政大学出版局:2016年9月26日:1,600円(税抜)
(平成二九年三月九日識/同日追記)