阿部多司馬
「これは思いのほか親切な男」
藤本駿馬
藤本駿馬が勤王派の機密を漏らしたことについて
「例の極論[中略]実に気遣わしき奴なり」
「藤本駿馬、実に寸々にきざむべし」
村田右馬太郎
右馬太郎が自白したとの石川石太郎の偽言を真にうけて
「村馬[村田右馬太郎]のことは実に反覆[変節]に付き、割腹さする訳にて候。然るに篤と考え候ところ、多弁にて色々ちんじ申すべく、決して割腹のことは行われぬことなり。然るにそのまま差し置き候はば必ず御召捕に相成り、[詮議の場で]対決と相成り候はば必ず種々の虚言をいい出すべし」
右馬太郎が弟 忠三郎を誅したのち右馬太郎も自刃すべきとの案を評し
「一以て二害を除くにて、上の上策か」
石川石太郎にたばかられた自らを嘆じて
「偽言を信じて村馬をうらみしこと、独り恥縮」
右馬太郎の親と叔父について
「相考え候ところ何分、親[村田植造]と叔父[村田角吾か]とを帰服致させ候こと要と相考え申し候。この親も叔父も実に真実の人ゆえ」
岡本次郎
目付の詮議に答え
「八児[岡本次郎]はその内[井上佐市郎暗殺容疑者のうち]一番年も参りし者なれど野生[半平太]全く心易くせず。[中略]殊に八児・村忠[村田忠三郎]・久喜[久松喜代馬]など、また弟[田内衛吉]なども[土佐国内で]盟せし者にあらず。追々、京にて盟せし者かと覚ゆ」
「下獄[岡田以蔵・岡本次郎・森田金三郎・村田忠三郎・久松喜代馬らが投じられている獄舎]じつに甚だし、全く七児[岡田以蔵]同様なり。[唯一人自白をしていない]森金[森田金三郎]は感心。然るに数人虚言[自白]に至り種々のこと申し出ては何とも致し方なきことなり。終に数十人、エタの手[斬首]に掛かり申すべく、追々の事にいたり申し候血涙のみ。誠に虚言人憎むべく。[中略]虚言人、数々ありて色々の数え立て言わるると実に応接の詞に窮し申し候」
「実に岡児[岡本]の不義、七児[岡田以蔵]に倍り申し候。右より色々のこと申し出候と見えて今日も種々いわれ申し候」
「岡本は以蔵にも劣り、誠に甚だしき人にてあきれ候。それに付て久松も村田も岡本にだまされ以蔵と同じ事になり、もう殺されるばかりにて候」
森田金三郎
目付の詮議に答え
「八児[岡本次郎]はその内[井上佐市郎暗殺下手人のうち]一番年も参りし者なれど野生[半平太]全く心易くせず、また森金[森田金三郎]・村忠[村田忠三郎]これまた同様なり」
「下獄[岡田以蔵・岡本次郎・森田金三郎・村田忠三郎・久松喜代馬らが投じられている獄舎]じつに甚だし、全く七児[岡田以蔵]同様なり。[唯一人自白をしていない]森金[森田金三郎]は感心」
「村忠・森金、みな実なる人物と見ゆる」
「森田金三は大丈夫にて候。岡本[次郎]と久松[喜代馬]・村田[忠三郎]と[岡田]以蔵は近々のうちに斬らるるろうと思い候。[田内]衛吉も拷問になりても森田のように一言もいわず、絞め殺されるように唯々祈りおり候。この上は拷問にて絞め殺される人が一番大丈夫にて候」
村田忠三郎
目付の詮議に答え
「八児[岡本次郎]はその内[井上佐市郎暗殺下手人のうち]一番年も参りし者なれど野生[半平太]全く心易くせず、また森金[森田金三郎]・村忠[忠三郎]これまた同様なり。[中略]殊に八児・村忠・久喜[久松喜代馬]など、また弟[田内衛吉]なども[土佐国内で]盟せし者にあらず。追々、京にて盟せし者かと覚ゆ」
いざ目付が詮議におよぶとなると
「[コチラとしては]唯々気づかうは久児[久松喜代馬]なり。次に村児[忠三郎]なり」
「下獄[岡田以蔵・岡本次郎・森田金三郎・村田忠三郎・久松喜代馬らが投じられている獄舎]じつに甚だし、全く七児[岡田以蔵]同様なり。[唯一人自白をしていない]森金[森田金三郎]は感心。然るに数人虚言[自白の意]に至り種々のこと申し出ては何とも致し方なきことなり。終に数十人、エタの手[斬首の意]に掛かり申すべく、追々の事にいたり申し候血涙のみ。誠に虚言人憎むべく。[中略]虚言人、数々ありて色々の数え立て言わるると実に応接の詞に窮し申し候」
兄 右馬太郎が忠三郎を誅したのち右馬太郎も自刃すべきとの案を評し
「一以て二害を除くにて、上の上策か」
「村忠・森金、みな実なる人物と見ゆる」
久松喜代馬
目付の詮議に答え
「[井上佐市郎暗殺下手人のうち]喜代[馬]は弟子なれど時勢論などせし事つとになし。[中略]殊にまた八児[岡本次郎]・村忠[村田忠三郎]・久喜[喜代馬]など、また弟[田内衛吉]なども[土佐国内で]盟せし者にあらず。追々、京にて盟せし者かと覚ゆ」
いざ目付が詮議におよぶとなると
「[コチラとしては]唯々気づかうは久児[久松喜代馬]なり」
「久児には実に込り入り申し候」
「下獄[岡田以蔵・岡本次郎・森田金三郎・村田忠三郎・久松喜代馬らが投じられている獄舎]じつに甚だし、全く七児[岡田以蔵]同様なり。[唯一人自白をしていない]森金[森田金三郎]は感心。然るに数人虚言[自白の意]に至り種々のこと申し出ては何とも致し方なきことなり。終に数十人、エタの手[斬首の意]に掛かり申すべく、追々の事にいたり申し候血涙のみ。誠に虚言人憎むべく。[中略]虚言人、数々ありて色々の数え立て言わるると実に応接の詞に窮し申し候」
目付の詮議に答え
「喜[代馬]も論の出来る人にてなし。[中略]日々参り候とて時勢論などは出来ぬ男なり」
伊藤甲之助
「伊藤[善平]の子[甲之助]、京都にて討死のよし。誠に誠に結構にて候。京都にて朝敵の会津を討て死んだれば、これより上の死にようは有るまじく候。それに母など泣くなどは誠に浅ましき事。如何に女なればとて、そのように浅ましき心にては誠に誠にやすからんことにて候」
河野万寿弥
目付の詮議に答え
「河万[河野万寿弥]は私と江戸より帰りし男にて同志なり。帰りし後も度々来りしなり」
小橋清太郎
「新小の問い落とされしこと、早一つこれ有り候。誠に怪しからぬこと。[中略]新小への引き合い急々頼み奉り候。誠に怪しからぬ人なり、言わいでも良きことまで申し、実に畏るべし」
(平成某年某月某日識)