野崎糺
野崎糺の詮議を評して
「誠に平日の同志の如くなめし[中略]頗る巧言令色」
野崎糺の詮議を評して
「色々弁をつくすこと甚だし[中略]巧言甚だし[中略]目付はそのはずながら頗る弁才あり、感心々々」
野崎糺の詮議を評して
「『うまい事を申す』武市は腹の中で冷笑していた。彼の自記にも『巧言令色』とある故、初めから野崎を信じなかったのは無論だ」
園村新作
「これはかねて知る人。殊によき人物ゆえ色々の話いたし候。これ(園村の入牢)も殿様へ存じよりを言いた事と申すこと。誠に誠にもはや言いようもなき世の中にて候。雨森[源右衛門]のとおりにて候。さてまた園村の女房は雨森[の家]より行ており候。これも誠に不幸せの人と存じ候。自分の親も三年牢に入り、また亭主が牢に入る。いろいろ世の中には不幸せな人もあるもの。まだそのうえに兄弟は去年、東へ追放におおており、このあいだ出奔いたし候よしにて、一昨々日[慶応元年四月七日]、園村が御目付へ届けて行き候よし。気の毒、気の毒。園村は誠に本当の人ゆえ、話しも馬があい、何辺都合良く茶も炭も一緒にし、毎日毎日、菓子など貰い候」
目付より園村新作について問われ
「話も致し候えども頗る神憑かりにて、天下国家の論などは出来ぬ人と思うたり」
目付の詮議に答え
「園[園村新作]はかねて申す通り時勢論など出来る人とは思わず。ただ神の告げ、あるいは神の知らせなど言うような人にて、何を聞こおも懇意にせず、出会ったことも滅多になし」
姉奈美や妻富に園村の詮議出廷を報じ
「昨日も今日[慶応元年五月一四日]も園村出申し候。これもなんにも悪いことはないに、ただただ色々無理無体に疑い候由。誠に誠にけしからぬ世の中にて候」
石川石之助
「石川という奴、実に愚人」
石川の詮議を評し
「頗る愚人、笑うべき口上多し」
石川石之助の詮議を評し
「石奸[石川石之助]は愚人にて、こちから色々問い落とし見れど[吉田東洋暗殺]のことは、きっと確証なし。ただ窮しおる模様なり」
石川石之助の詮議を評し
「村馬[村田右馬太郎]が云々ということ、真面目にて如何にも誠らしく云たり。よって是こそ誠と思い[中略]その後とてこの事をいわず。今この事を考うれば是もホンの風説位のことにて、たしかなことでなきを石奸が吾を問い落とさんための偽言なりしと思う。[中略]野生は石奸の愚人にさえウツブケラレタ[方言意味知らず]心外々々」
森権次
森権次の詮議を評し
「森は静かに事を分け、折々言うなり」
高屋順平
高屋順平の詮議を評し
「高順[高屋順平]弁舌あり、人をなめしたり。笑うべし笑うべし」
土居弥之助
土居弥之助の詮議を評し
「土弥[土居弥之助]の申しぶん法外至極なり」
土居弥之助の詮議を評し
「土弥は頗る名人にて、真にかあらんことを言って問い落とすよし」
川崎省三郎
「川清[「川省」の誤記乃至誤読か]という奴、実に奸物、言語に絶し申し候」
「目付[川崎省三郎を指すか]には漢学者の能弁」
牢番たち
「島村重蔵の養子[島村金次郎]、久しく番に出よるがこれは誠にいい分のなき人にて候。この間も重詰めなどもらい候。なんぞ急に云ておこし度がひょっとあれば、これへ行って頼ふだれば、どんなことでもかまわん」
「雄之丞のこと色々お申し越し、あれは誠に騒がしき男にてよほど我慢なような者にて候えども、どうゆうものぞ、不思議に親切にしてくれ候。外の人へそれほどにはせず、用でも直ぐへは行かず一癖なる男にて候。それゆえ外の人は雄之丞を悪う言い候。されども我等へは不思議に親切にしてくれる。この間タバコも二度取りへやり候。のちに行く時に『最早みてましたか』と言い候。どうゆうものぞ『この間内はタバコをよけ飲みてた』と言ったことなり。また衛吉が拷問にあう時に『普段もの言いが荒いきに役人どもが尚害へするろう』と言って話したこともある。内へ行って雄之丞が言った事へ一つもウソはない。また例えペラペラ言って追従言うような者ではない。存外心良き者にて候」
「下番のうち佐蔵・雄平・弥吾平など言うものは決して気遣いござなく無く、その外の者も大概は気遣いなく候」
「島村金[次郎]が番が辞まったには誠に誠に力がおちた。これからは佐蔵・雄平・弥吾平・雄[之]丞のうちを夜分に[武市家宅へ]やり申し候。これなれば少しも少しも気遣いはなく候。さて又この間から潮江の半之丞と言う者の下番になり参り候。これは誠に良き者のように見受け候。直に雑喉場[地名]の渡しの向うじゃげな。小笠原どもにはひょっとして知っては居るまいかと思い候。また近頃比島[地名]からも年のいた者が出よる。これも誠に良き者にて候。試しに今度出たればいにしだに家へ本ばかり持たせてやり候まま、よく可愛がりて酒ども御飲のませ有るべく候[中略]佐蔵は誠に親切にしてくれ候につき、何ぞ考えておやりよ」
「この人[喜太次]は安芸[地名]の人にて中番にて候。喜太次と言って実馬の友達にて候。誠に実体この上もなき人にて親切にしてくれ申し候。少しも気遣いなく候まま、[自宅へ]遣り申し候。江ノ口[地名]へ出て来ており候よし、どうぞ酒など飲ませ、懇ろにするがよく候」
「水を入る桶の輪が切れ、惣七まいり候由。あれも近頃はめっそう親切にしてくれ候」
「佐蔵・雄平・半兵衛は誠に誠に親切にして昨日も雄平はわざわざ見舞いに来てくれ、佐蔵もこの間わざわざ出て来てくれ申し候。またまた[礼など]考えてなんぞおやり遣わされたく、この三人は格別にて候」
村田丑五郎
「丑五郎も[獄舎へ]毎日弁当を持って来るげな、深切な事とぞんじ候」
「丑五郎も誠に感心、相変わらず色々世話いたし候よし。ただ嬉しく候」
「丑五郎もよう世話するげな。また母なども先ず先ず[半平太宅へ]置くつもりは誠に結構にて候。遣い銭も考えてやるがよし」
「丑五郎も何かよう世話するよし、嬉しく候。下番も中番も皆々丑[五郎]を褒めるぞ褒めるぞ。弁当を方々から持って来るに、外の家来は『まだ用事がある』と言う内に早去に候へども、丑は『もう用事はないか』と言うて『無い』と言うまで待ちようげな。『外の人とは違うておる』と言うて褒め、嬉しく候」
内村元衛
「元衛、次第成人、この間はとまり候よし、誠に誠に勢のよき子とて嬉しく候」
(平成某年某月某日識)