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短歌篇 きゑやらぬ〜


和歌を単線上に現代語訳するのは事実上不可能なので「大意」は半ば逐語訳です。
歌の風韻や詩情は原文から各々で構築しなおすことをオススメします。というか、してください。

きゑやらぬ 思ひのさらに うぢ川の 川瀬にすだく 蛍のみかは
●大意:燻る炎のような恋心にくわわる一層の切なさ、その炎に寄りそってくるのは、宇治川の浅瀬に集う蛍だけではないはずだ。
●きゑやらぬ……消え切らない。消えるはずのものや消えそうなものがまだ消えないでいる様。ちなみに歴史的仮名遣いは「ゑ」ではなく「え」乃至や行四段目の「江」。
●思ひ……恋心、恋情、思慕。末尾の「ひ」に火・炎の意を掛ける。
●さらに……そのうえ、一層、くわえてなど現代語とおなじ用法。
うぢ川……山城国をながれる名所歌枕。宇治川。頭の「う」に辛いことなどを意味する「憂」を響かせる。
●川瀬……川底が浅くなっているところ。蛍のメスは産卵のためここに群集する。
●すだく……漢字で書けば「集く」。群れをなして集まること。
●蛍……甲虫目ホタル科の昆虫の総称。日本では古来よりの夏の風物詩。『古今集』以後、歌材としてひろくよまれる。
●かは……係助詞「か」と係助詞「は」の結合した語。疑問をしめす一方で文末の用法では反語の意味にもなる。
●原本:京都国立博物館蔵「坂本龍馬桂小五郎遺墨」/底本:宮地佐一郎編『坂本龍馬全集』
●詠作時期:年不明 夏か
●詠作場所:山城国 宇治か
●解説
 「坂本龍馬桂小五郎遺墨」では「さてもよに〜」に続いて記される龍馬詠草一 [1]第二番目の歌。歌材から京都における夏の詠作とわかり、想定される時期によって、題詠とも意中への贈歌ともとれうる歌。

ホタル(源氏五十四帖より)

●鑑賞
 同歌は掛詞や縁語をたくみにつかった技巧的な歌と言っていいだろう。詞にむかい彫琢する歌人龍馬の姿がしのばれる。仮に当歌のの念頭に楢崎龍があるとすれば、所縁という点で宇治の地名に多少違和感がないこともない。田中顕助が後年おどろいて回顧する、お龍との二人歩きを龍馬が宇治あたりでもしていたのか、木幡にゆかりがあるらしい楢崎貞(お龍母)との関係で、宇治まで出張る機会でもあったのか、想像の余地はあっても憶測しかできない。いずれにせよ歌の中でくすぶる炎に寄りそう者は、『源氏物語』宇治十帖の世界観か、あるいは宇治の橋姫 [2]を期してよみあげたものか。

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  1. mark_utarnhotyu.pngさてもよに〜」参照。
  2. mark_utarnhotyu.png 例歌:『古今集』読人しらずさむしろに衣かたしき今宵もや我をまつらん宇治の橋姫

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(平成二一年二月二一日識/平成二四年二月四日訂)

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