space_space.gif
 龍馬堂>>龍馬詩評>>短歌篇 総覧>>短歌篇 みじか夜を〜 
space_space.gif
坂本龍馬の目録

短歌篇(坂本龍馬)

LinkMark嵐山〜

LinkMarkうき事を〜

LinkMarkゑにしらが〜

LinkMark面影の〜

LinkMarkかくすれば〜

LinkMarkかぞいろの〜

LinkMarkきゑやらぬ〜

LinkMark君が為〜

LinkMarkくれ竹の〜

LinkMarkこころから〜

LinkMarkさてもよに〜

LinkMarkさよふけて〜

LinkMark月と日の〜

LinkMark常盤山〜

LinkMark春くれて〜

LinkMark挽臼の〜

LinkMark人心〜

LinkMark藤の花〜

LinkMark文開く〜

LinkMark又あふと〜

LinkMark丸くとも〜

LinkMarkみじか夜を〜

LinkMark道おもふ〜

LinkMarkもみぢ葉も〜

LinkMark山里の〜

LinkMarkゆく春も〜

LinkMark世と共に〜

LinkMark世の人は〜

龍馬詩評

龍馬詩歌

LinkMark短歌篇

LinkMark雑歌篇

LinkMark贈歌篇

龍馬評

LinkMark人傑篇

LinkMark英傑篇

坂本龍馬

LinkMark龍馬概略

LinkMark龍馬日譜

LinkMark龍馬詩評

LinkMark考龍馬伝

LinkMarkえにし

LinkMark関連本など New

space_space.gif

短歌篇 みじか夜を〜


和歌を単線上に現代語訳するのは事実上不可能なので「大意」は半ば逐語訳です。
歌の風韻や詩情は原文から各々で構築しなおすことをオススメします。というか、してください。

みじか夜を あかずも啼て あかしつる 心かたるな やまほととぎす
●大意:夏の夜を満たされることなく啼きあかしたその訳を、告げてくれるな山居のホトトギスよ。
●みじか夜……日没から日の出までのあいだが短い夜のこと、夏の夜。
●あかずも……「飽く」の未然形に打ち消しの助動詞「ず」と係助詞「も」がついて、上接語を強調するかたち。飽きることもなく、満たされず。
●啼て……啼声「鳴きて」と啼泣「泣きて」の掛詞。
●あかしつる……「明かす」連用形に完了の助動詞「つ」の連体形がついてもの。寝ずに朝をむかえて、夜を徹して。
●かたる……話す、言う、述べる。
●やまほととぎす……山にいるホトトギス。ホトトギスは夏になると山から里へ下り、やがて山に帰るものとみなされていた。
●原本:京都国立博物館蔵「坂本龍馬桂小五郎遺墨」/底本:宮地佐一郎編『坂本龍馬全集』
●詠作時期:年不明 夏か
●詠作場所:不明
●解説
 「坂本龍馬桂小五郎遺墨」中「さてもよに〜」と「きゑやらぬ〜」の歌につづく、龍馬詠草一第三番目の歌。詠作時期が不明なのも先の二首とおなじ。

ホトトギス(広重短冊より)

●鑑賞
 この歌は『古今集』壬生忠岑暮るるかと見れば明けぬる夏の夜をあかずとやなく山郭公と、句・語幹の共通が一句・四語(やまほととぎす山郭公あかず啼きなくあかし明けぬ)とおおく、彼我に本歌取り {1}の関係を認めてもいいだろう。忠岑歌は古今集において夏部にはいされる夏の歌だが、龍馬詠はと詞書される「きゑやらぬ〜」に、区切り符号なし {2}でつづき書きされる歌なので、主題はこちらも恋にあるものとみていいはずである {3}。鳥獣の鳴き声から恋が想起されるのは古典詩歌の常道だろうし、古今集における忠岑歌の配列は、紀貫之夏の夜のふすかとすれば郭公なくひとこゑにあくるしののめのあと、紀秋岑夏山に恋しき人やいりにけむ声ふりたててなく郭公のまえにあって、恋歌的な解釈にも支えられている。本歌取りによって夏の歌を恋の歌に直接主題換えした龍馬詠は、恋人(恋鳥?)を呼び鳴いているホトトギスの心へ直接語りかけるような、優しく淑やかな歌に変じていて美しい。龍馬作歌の特徴・傾向の一つに"心への接近" {4}をあげたい私としては、当歌はその典型例とおもえる。

mark_utarntop.png PageTop 


  1. mark_utarnhotyu.png それと特定できるかたちで古歌・先行歌から語句や趣向をとりこみ、作品のイメージを重層化・複雑化させる手法のこと。
  2. mark_utarnhotyu.png 龍馬は区切りを示す符号として印を頻用することが龍馬詠草二や各種書簡から知れる。
  3. mark_utarnhotyu.png 藤原定家『詠歌大概』に従えば、本歌取りは参照歌と異なる主題を詠むべきものともされている。
  4. mark_utarnhotyu.png いまに龍馬詠とされて残る短歌わずか二六首中、詞書や語句に直接"心"の文字がみえている歌は全部で七首(四分の一、割合で25%以上)ある。

mark_utarntop.png PageTop 


(平成二一年二月二一日識/平成二四年二月六日訂)

mark_utarntop.png PageTop 

space_space.gif
space_space.gif
 龍馬堂>>龍馬詩評>>短歌篇 総覧>>短歌篇 みじか夜を〜 
space_space.gif