短歌篇(坂本龍馬)
ゑにしらが〜
面影の〜
かくすれば〜
かぞいろの〜
君が為〜
くれ竹の〜
こころから〜
さよふけて〜
常盤山〜
挽臼の〜
藤の花〜
又あふと〜
丸くとも〜
道おもふ〜
もみぢ葉も〜
山里の〜
ゆく春も〜
和歌を単線上に現代語訳するのは事実上不可能なので「大意」は半ば逐語訳です。
歌の風韻や詩情は原文から各々で構築しなおすことをオススメします。というか、してください。
心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを(情緒を解するであろう人に見せたいものだ、津国の難波あたりの春の風景を)
将軍大政返上のことありける時と詞書される歌。しかし正しくは慶応三年三月六日付印藤聿宛龍馬書簡によって、下関は伊藤九三邸における歌会での作とわかる。書簡によると、このおりの歌は一巻にまとめられ、
ある翁に判じられたところ、龍馬詠は席上第二の評価をうけたそうである。龍馬ご自慢の佳作なのだろう。
氷ゐし志賀のからさき打とけてさざ浪よする春風ぞ吹は、余寒と風に春のおとずれをよむ(
春立つ心をよめる)歌、『新古今集』源通光
みしま江や霜もまたひぬあしのはにつのくむほとの春風そ吹は春寒と風に春のおとずれをよむ歌で、余寒・春寒に春風をはいす例は先行歌もおおい。龍馬詠のおもむきは、寒景と春風の景物的な対比を一歩すすめ、心象まで踏みこみ詠みいれた点が珍しく、春風歌としてはそこに新鮮さを認めたい。
(平成二一年二月二一日識/平成二四年二月二日訂)