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坂本龍馬の目録

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水戸遊説使〜時勢の波〜


 安政五年一一月、土佐に帰国していた龍馬の元に一通の手紙が届いた。差出人は「加藤於菟之介」に「菊地清兵衛」。共に住谷寅之介・大胡聿蔵の変名である。

 二人は「戊午の密勅」と「安政の大獄」にからみ、諸藩の遊説とその藩状調査ため、吉田健蔵・根本正之介らを従えて同年一〇月一一日に江戸を出立。一一月一七日に土佐と伊予の国境立川へ到着した。

 しかし、変名を使用していることからも察せられるように遊説使一行は身もとを証明することが出来ず、入国する事もかなわない。そこで奥宮猪惣次と龍馬にあて手紙を記し、入国の斡旋を願うことになった。

●『住谷信順廻国日記

十一月十八日、以飛脚、奥宮猪惣次竝坂本龍馬へ書状遣ス。

●『吉田健蔵日記

一、同十八日、高知城下え飛脚を出す。奥谷喜宗次、坂本龍馬え書状を遣す。

 住谷らが何処で龍馬の名を知ったのか、あるいは知りあったのか、正確なことは解らないが、二人の交遊を推測させる史料はある。
 「尊攘遺墨」と題される連名帳で、山岡鉄太郎が建立した東京谷中の全生庵に所蔵されている名簿だ。とりあえず件の名簿に列ねられた人々を以下に記そう。

ただし連名簿の作成は文久年間と推定される
尊攘遺墨 連名者名簿
清川八郎安積五郎北有馬太郎笠井伊蔵
嵩春斎西川練蔵寺和尚益満休之助
伊牟田尚平神田橋直助住谷寅之助下野隼次郎
桜田良介藤本鉄石飯居間平山田大路陸奥守
池田徳太郎松沢良作西恭助大村久之丞
依田雄太郎鈴木恒太郎鈴木豊次郎間崎哲馬
坂本龍馬

 また後年のことだが、同じく水戸の酒泉彦太郎は武市半平太を評した文章の中で、龍馬のことを以下のように記している。

●『酒泉直滞京日記

小楯[武市半平太の諱]幼より武芸を好み、江戸に遊び[中略]、其の技大いに進む。且四方の士に交るを以て、広く辞世の事に通じ、頻りに心を勤王に傾けたり。当時、高知藩に勤王の議を唱ふるもの少なかりしが、小楯の帰りしより、後進子弟靡然として響きの如くに応じ、又同時に坂本龍馬ありて出でたり。是故に同藩士気益々振作せり。

 つまり上記の記事から推測できることは龍馬にしろ武市にしろ、水戸藩を中心とした諸国の有志間には早くから互いに併称されるだけ、その名が知られていたということだろう(その評判が「勤王の志士」としてのものか「剣客」としてのものかは、受け手に寄ってマチマチだろうが)。

 住谷らが書状を発した翌日、これを受けとった龍馬は応接に出向くむねを返書にしたため、それを受け取った住谷らのもとへ二二日に川久保為助・甲藤馬太郎らが龍馬の意をくんで訪れる。

 翌二三日、遅ればせながら龍馬も立川へいたり、藩内の情勢について質問を受けた。

●『住谷信順廻国日記

同廿三日、龍馬(二十五)尋来ル。川久保為介(廿一歳)、甲藤馬太郎(同)。龍馬誠実可也ノ人物併撃剣家。事情迂闊、何も不知トゾ。
[中略]
一、外両人ハ国家の事一切不知。龍馬迚も役人名前更ニ不知、空敷日ヲ費シ遺憾々々。

 当時の龍馬はまだ「政事的に目覚めていなかった」などとしてよく紹介される評だ。

 人物としては誠実可也の人物との高評を受けているが、同時に事情迂闊、何も不知とぞとも評され、住谷らには酷く失望感を抱かせている。さらに、この頃の龍馬に遊説使一行を入国させてやれる権限などあろうはずもなく、奥宮猪惣次からも入国不能との連絡をうけた一行は、結局入国することも適わないまま失望のうちに土佐を離れることとなる。

(平成某年某月某日識)

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